この文章に何か衝撃が走ったのですが
20世紀の生物学は「生命現象(DNAやタンパク質など)はいかにしてつくられるか」に注目してきました。
ところが近年分かってきたことは、
「細胞はつくることよりも、壊すことの方をずっと大切にしている」ということです。
タンパク質がつくられる方法はたった1通りですが、壊される方法は何十通りもあり、いくつものバックアップシステムに支えられています。
細胞は何があっても壊し続けます。傷ついたり故障したから壊すのではなく、壊れても古びてもいないのに壊します。
つまり「動的平衡状態※」は、みずから積極的に壊すことから始まり、つくり直すことで補完されて回っているわけです。
なぜ壊すことを優先するのか。それが「エントロピー増大の法則」に対抗する唯一の方法だからです。
「法則」が生命現象を壊すより先回りしてわざと自らを壊し、つくり替える。自転車操業のようですが、しかし、さすがにこれを60年以上続けていると、だんだん自転車のスピードも遅くなり、やがて「法則」が自転車をつかまえ追い越します。
それが個体の死です。
その時点で、生命は次の担い手に「動的平衡状態※」をバトンタッチしています。これは「子孫を残す」という意味ではありません。
私たちの体の中で一時秩序を保っていた分子が、他のところで次の秩序を保っているという意味で、生命現象は38億年間、ずっと地球上で秩序を維持してきたのです。
何でもビジネスに例えてしまう私ですが、
自らで積極的に壊しながらも、またつくり直すことで補完していく
スクラップ&ビルドは命も会社も同じなんですね。
※動的平衡のイメージはこちら https://tha.jp/8826
生物学者の福岡伸一氏の著から引用
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